次に冬、脳梗塞が発症しやすい場所ですが、一番多いのは、就寝中で、あとは温度の高いところとして、脱衣場や玄関先が挙げられます。特に家全体を暖房している場合に注意が必要なのは、外出する時です。玄関から外に出る場合が、家中の温度差よりはるかに大きいのです。
温熱対策として、冬は断熱、夏は遮熱
一般的に夏も冬も断熱や気密を高めれば満足できると思っている方がほとんどですが、日本の気候は四季によって温度が変わります。夏に断熱や気密を高めすぎると、時間が遅れてからジワジワ暑さが伝わっていき、暑くなってしまうと保温効果が働き、蒸し風呂状態になります。
ですので、夏は外部で太陽の赤外線を遮熱してあげる必要があります。
ここで少し太陽光の原理をお話しします。
太陽から降り注ぐのは、熱が直接届いている訳ではなく、目には見えない赤外線という線が届いて、物に当たると熱を発します。これは輻射とか放射と呼びます。そうでなければ、富士山を登るごとに暑くならないですよね。この赤外線を反射させると、熱は家の中に入りません。しかし、熱の要素には、放射以外に対流や伝導というしくみもあるので、全くゼロにはなりません。
太陽の赤外線は一方的に降り注ぐだけではなく、温まった地球から宇宙へ逆に赤外線を放出することもあります。太陽の赤外線を反射や遮断することとしては、雲があります。雲の多い日は日差しが入ってこないので、赤外線が宇宙へ反射されています。しかし、一度温まった地球も雲の多い日には保温状態となり、宇宙へ赤外線が放出されません。冬の夜に雲が無い時は、朝方とても冷えますよね。これは地球の赤外線が宇宙へ大量に放出したからで、放射冷却現象と呼びます。
では、反射することによって、熱が保温できるものとしては、魔法瓶が挙げられます。中は鏡になっていますよね。あれは一旦温まったお湯が、鏡で赤外線が永遠に反射し続けているという現象です。
これらのことから、太陽の赤外線は、反射率の高いものですると、室内に入りにくいことがわかります。例えば、雪を想像してみて下さい。雪の結晶は透明です。スキー場に晴れた日に滑ると、日焼けがしますよね。これは太陽の赤外線が雪で反射されるからなんです。
もう1つ、東北地方に見られるカマクラ。これは、雪でドーム型に固められています。しかし、中に入ると不思議と寒くありません。これは、人間からでている赤外線がカマクラの雪に反射して、自分に返ってきているからなんです。
面白い実験をしてみましょう。
この木とステンレスの2つのボウル、顔を瞬時に入れると、さてどちらが暖かく感じるでしょう?
今まで、反射の話を読んでいると、想像がつきますよね。
一度、試してみるとわかりますが、イメージでは、木の方が温もりがあるので、木だと思いますが、顔をつけずにいると、ステンレスの方が暖かく感じます。これも自分の顔から出た赤外線がステンレスで反射されているからなんです。余談ですが、触れば、木の方が暖かいのがわかります。これは体感温度といい、本当はほとんどどちらも温度差は無いのですが、触ることによって、体温はステンレスの方が熱を奪いやすいからなんです。ちなみに同じ室内に置いているものは、赤外線温度計で計ると、ほぼ同じだということがわかります。
漆喰(しっくい)には結晶ができる
冬対策としては、断熱効果を高めると良いとされますが、夏暑いのも断熱材を増やせば良いと思っている方が多いのですが、では真夏に毛布をくるんで外で居れますか?夏の対策は断熱ではなく、遮熱なのです。外壁に遮熱対策をせずに断熱材をとても分厚くすると、夏は時間が遅れて暑さが伝わっていき、こもってしまいます。
■地中熱を利用した「逆スラブ基礎」
明治の初め、北海道・アイヌの人々の生活の知恵として、家をつくる時に床は作らず、土間にそのまま萱など草をたくさん敷いて寝るということがあった。それで冬の寒さをしのぐというのです。それを学んだ入植農家たちは床板を張らない家をつくり、土間に草を敷き詰めてそこに寝た。内地とは全く違った厳しい寒さだったが、地温に加えて敷き草も温かく、それで何とか冬を越せた。
一方、武士の入植者は身分の違うアイヌと仲良くなるどころか軽蔑していた。当然のことながら、土間にそのまま寝るなどというのは野蛮な土民のすることだと内地にいた時と同様に床板を張った家を建てた。そして冬を迎えた。ところが寒い。むしろを敷こうと何であろうと、床下から床板の隙間を通って入ってくる冷たい外気、床板に直接伝わる氷点下何十℃の外気温、布団に入っても温まるのは容易ではない。それで子どもをはじめ弱いものから病気になり、死んでいったという。
~東北大学名誉教授(農学博士) 酒井惇一氏 「随想・東北農業の七十五年」より一部転載
普通の民家では、土間から板敷きの間に上がる形が多いのですが、土間に茅束を敷き、その上にゴザを敷いた所にいろりがあり、これを「イドコ(土座)」といい、甲府盆地のほか、東北・中部・北陸に見られます。
現在ではほとんどの家づくりが床下空間をつくっています。この床下空間の温度は基本的に外気温とほぼ同じになっています。これは、基礎のコンクリートと外壁との間に風を通すための隙間を設けているためで、床下の湿気を通風することで防いでいます。
しかし、湿度の高い床下(地域)には、隙間を設けただけでは乾燥してくれず、当然ながら炭を床下に敷き詰めてもほぼ意味はありません。本来なら弥生時代の高床式のように完全に外から床下が見える開放的なものが必要になります。
地中熱エネルギーは、その深度によって影響を受けることが全国地中温度記録データから判明してきました。上の図は大阪での冬(1月)の地中熱の推移を表したもので、一般的な基礎と逆スラブ基礎の場合とで、地中熱の伝わり方が変わる様子がわかります。
一般的な基礎の場合、床下に空間があるため、家の生活温度がほとんど地中に蓄熱されませんが、逆スラブ基礎の場合は、床に断熱を施していないため、コンクリートに蓄熱し、さらに長い時間かけて地中にも蓄熱していき、エネルギーが保存されます。
■床・外壁・天井すべてを炭で囲まれた炭化コルクとウッドファイバーでダブル断熱
■南側の軒の出幅を大きくし、夏の日差しを抑え、冬至の日差しは低い角度なので、部屋の奥まで届くような間取り
■エアコンの空気は対流式なので、遠赤外線の暖房器具がおすすめです。
■ペアガラスLow-eで結露防止
■エスキモーの話
寒い地域と暑い地域に住む民族とでは、どちらが寿命が長いのでしょうか?
それは、暑い地域に住む民族です。寒い地域では、暑い地域に比べて人間はカロリーを多く消費しますので、エスキモーなどのイヌイットたちはアザラシやクジラの高脂肪の肉を主食としていますので、その油を摂ることによってカロリーを溜め込んでおり、食生活の総カロリーのうち、脂肪の占める割合は40~50%もあります。また、野菜など農耕作物ができないため、ほぼ肉食で調理せず、生肉のまま食べ、ビタミンなどを吸収しています。
北海道・アイヌの昔の人たちは、冬になると、床下空間を作ると寒いので、土間に直接萱など草を敷いて寝ていたのです。それだけ地中熱を利用していたということです。
【空気】人は1日24時間に空気を13000~14000リットル吸うと言われています。その空気に健康を害するものが混じっていても選ぶことはできません。
【温度】夏、暑い部屋で熱中症によるものや冬、家と外との間での温度差によるもので死亡が増加しています。
【食】ガンの死亡の原因は食によるものが一番多く、また日本の台所でダイオキシンが発生する異変が起きています。これらは住むための最低限クリアしなければならない要素なのです。
【構造】耐震を強くするには接着剤で固められた木でされています。この接着剤の耐久性は年々劣化していき、20~30年で無くなります。
【湿度】気密性の高い家では、一旦湿気が見えない部分に発生すると、抜けていかず、木や鉄を腐食させます。
【素材】有機物・特に石油製品は加水分解と紫外線で劣化が進行します。また見た目ツルッとした表面材は火事には青酸ガスが発生します。これらは、法律には載っていないとても大事な要素です。
【間取り】植物は太陽の光を浴びて、酸素を作り出し、その植物を動物が食べ、その肉を人が食べています。またカロリーとは熱量のことで、太陽が無いとカロリーが生まれず、食べ物も生まれず、体の原動力となるものが無くなります。その太陽の差す方向や時間、風の流れる開口部、長く持つための可変性などとても大事です。
【自然】化学物質や工業製品では人間そのものの力やポテンシャルを発揮できず、ギスギスした生活になりがちです。自然の一部にでも触れることで暮らし方が変わります。
【心地よさ】長く住むためには飽きの来ない自分の好きなことに没頭できる又はゆっくりとした時間が持てる空間が必要になります。