石油製品や化学接着剤の加水分解とは
石油製品を代表するプラスチックが劣化する要因として、大きく2つあります。1つは太陽光の紫外線です。もう1つは、水です。「加水分解」・・・読んで字のごとく、水を加えると分解する。
化学は難しいようですが、とてもわかりやすく説明すると、石油製品であるプラスチックや化学接着剤の化学式の中には、元々「水」の要素が入っていると思ってください。その石油製品に水を近づけると、水の要素が少しずつ引っ張り出されて、水とくっついてしまいます。
石油製品の中にあった水の要素が年々減っていき、劣化が始まります。やがて無くなってしまうと、プラスチックは割れたり、接着剤が剥がれたりします。特に紫外線が当たらない床下や壁の中、屋根裏といった部分では、湿気による劣化が著しく進行します。
ポイントは建物の取替えが効かないところに石油製品を使用しないことです。
靴は履くものですが、まれに靴をコレクションのように一度も履かずに大事にとってある方がおられます。しかもそれはとてもプレミアな価値のあるものなのですが、靴は人工皮革やビニール、ウレタンなどの石油製品でできているので、何年も収納庫に入れたままにしておくと、ある日突然、収納庫から出してくると、ボロボロになっている場合があります。これは、紫外線が当たりませんが、湿気による加水分解によるものです。
断熱材は、多種・多様のものがあります。特に全国で代表的なものがグラスウール。このグラスウール事態はガラス繊維なので、湿気が入った場合、ある程度は呼吸できますが、通常グラスウール単体ではチクチクが飛散するので、ビニール袋に入った状態で施工されています。特に気密性を上げる場合は、このビニールを柱と柱の間に隙間なく施工しないといけないのです。
しかし、壁の中の見えない部分では、人の手で作業をするため、少し隙間が空いたり、破れたりがあります。こういったところからほんの微小な湿気が流れ込み、閉じ込められ、出ていけなくなります。また、木は防水ではないので、湿気がくると吸い込みます。この木とビニールが接している部分に見えない結露が生じ、カビが生えるのです。カビは空気を必要としない嫌気性バクテリアや木材腐朽菌が繁殖し、知らない間に構造体が腐食していくのです。
グラスウールの他には、ウレタン、ポリスチレンフォーム、フェノール樹脂など石油製品は、すべて同様に呼吸できません。ですので、湿気が行き来できる断熱材として、炭化コルクやウッドファイバーなどを使用します。ただし、石油製品でもパーフェクトバリアーのように繊維状になっているものは呼吸をします。
そんな状況で、天井に断熱材を敷いている家が多いため、屋根裏の特に野地板の裏側が結露し、水滴が溜まってきている。特に素人が怠りがちなのは、屋根裏の換気を目的として、天井点検口などを開けっぱなしにしていることがとても恐ろしいことに繋がる。
築2~3年でこのような事態になる場合もある
冬場、室内で水蒸気がたくさん発生する暖房機や台所の空気が一気に屋根裏に流入し、屋根の温度が下った時に急激に野地板の裏が結露してしまう。それによって、野地板は腐食していき、やがて屋根が抜け落ちる事態にまで発展する。この野地板に使用している合板が主な原因の1つで、合板は板と板を接着剤で貼り合わされているため、この接着層で湿気が外に出なくなっているためだ。
また、導入が急増している太陽光発電システムは、南側に設置されることが多いが、その影となる部分の野地板が乾燥しにくくなることも注意が必要だ。
さらにこの板をバラ板に変更しても次には、アスファルトルーフィングという防水層が湿気を遮断している。ほぼ国内の屋根防水はこの防水がほとんどだ。しかし、透湿防水シートとバラ板にすることによって、屋根裏の結露は免れる。
外壁や屋根、特に外に面した木部などは、ほとんどの工事業者は防水または防腐塗料を塗るのが業界の常識のように思える。しかし、この暗黙のルールは人の心理に基づくもので、心配だから・・・という理由が多い。特に間違っている訳では無いですが、防水することによって、雨水ははじき、中の木部には浸透しませんが、それは最初の話。時間が経っていくごとに、木はほんの微細な隙間や割れなどから湿気が入り、木全体に湿気が広がる。しかし外に塗料が塗られているため、呼吸できず、その湿気は唯一隙間からしか出られないので、どんどん木に湿気が溜まっていき、内側から腐食がはじまり、腐ってしまいます。この話は、実際にあった話で、古民家再生をされた工務店が塗料会社を信頼した結果、招いた事故でした。古民家も再生するために防腐塗料ですると、その後長持ちしなくなるということになるので、注意が必要です。
ごく最近は、室内と壁の中とは、気密性が高いので、壁の中に湿気は流入することは無いとどこのメーカーも工務店も宣言しています。しかし、本当なのでしょうか?これは化学を理解しているとすぐにわかる筈です。
これは、壁の中にどのようなものが使われているのかというと、構造材である木材、接着剤で貼り合わされた合板や集成材、石油製品の断熱材、防水紙や防湿シートなどがあります。これらは全て有機物なので、ナノレベルでじわじわと劣化が進んでいます。この劣化とは、分解とも言い、化学の分子同士の手が切れ、他の分子と結合したりします。
空気中に一番多いのは、窒素で次いで酸素、アルゴン、二酸化炭素などと続きますが、最終的にこのような物質になっていくので、多く占めるわけです。分解は熱による分解、微生物による分解、光による分解、湿気による分解と様々あります。
有機物はC(炭素)とH(水素)からなるので、C→CO2、H→H2O というように必ず水ができてしまいます。そうなると、壁の中に湿気が入らないはずが、湿気は年々壁の中から生まれてくるのです。これを知らない建築技術者が多すぎるのです。
【空気】人は1日24時間に空気を13000~14000リットル吸うと言われています。その空気に健康を害するものが混じっていても選ぶことはできません。
【温度】夏、暑い部屋で熱中症によるものや冬、家と外との間での温度差によるもので死亡が増加しています。
【食】ガンの死亡の原因は食によるものが一番多く、また日本の台所でダイオキシンが発生する異変が起きています。これらは住むための最低限クリアしなければならない要素なのです。
【構造】耐震を強くするには接着剤で固められた木でされています。この接着剤の耐久性は年々劣化していき、20~30年で無くなります。
【湿度】気密性の高い家では、一旦湿気が見えない部分に発生すると、抜けていかず、木や鉄を腐食させます。
【素材】有機物・特に石油製品は加水分解と紫外線で劣化が進行します。また見た目ツルッとした表面材は火事には青酸ガスが発生します。これらは、法律には載っていないとても大事な要素です。
【間取り】植物は太陽の光を浴びて、酸素を作り出し、その植物を動物が食べ、その肉を人が食べています。またカロリーとは熱量のことで、太陽が無いとカロリーが生まれず、食べ物も生まれず、体の原動力となるものが無くなります。その太陽の差す方向や時間、風の流れる開口部、長く持つための可変性などとても大事です。
【自然】化学物質や工業製品では人間そのものの力やポテンシャルを発揮できず、ギスギスした生活になりがちです。自然の一部にでも触れることで暮らし方が変わります。
【心地よさ】長く住むためには飽きの来ない自分の好きなことに没頭できる又はゆっくりとした時間が持てる空間が必要になります。